ある日のこと、リセイの頭上、
  べりべりと凄まじい音を立てるものがありました。
  ムイシキでした。
  ムイシキが投げ込んだ、
  得体のしれない塊にすっぽり覆われてしまったリセイは、
  ムイシキの行動を言葉で説明することができず、
  そのまま、心の奥の奥の、奥底深い部屋に入っていき、
  ぴたりと戸を閉ざして籠ってしまったのでした。
  リセイが心の奥底に篭ると、
  それまでリセイが自らの知識で太陽のように明るく照らしていた世界が、
  真っ暗になりました…

                   (『リセイとムイシキ』)

神話というのは洋の東西を問わず、
あるときは自然の力であるとか、
あるときは目に見えない何かであるとか、
それを神様になぞらえてでき上がっている物語なので、
解釈のしようは実はいくらでもあって、
そして、いくら解釈を試みようとしても、
大元の創作者が一体どんな思いを込めて何を考えて語っていたのか、
後の世の人間たちには本当のところは分かりようがないわけで、

だから、あくまでも、解釈の一つ。

たぶん、どなたかがどこかで言っていたのを見るか聞くかしたことがあって、
決して物語屋のオリジナルの視点ではないとは思うのだけど、
一回「こうだ」と思ってしまうと、
もうどうしたって「そうだろう」としか思えない。

『古事記』の名前で呼ばれる日本神話の中で、
最も有名で大事な2大キャラクター、アマテラスとスサノオ。
アマテラスはまず何より太陽神であって、
その強く見目麗しい姉を困らせる暴風雨の弟がスサノオ。
でももしもそれが、
太陽とか暴風雨とかの自然現象ではなく、
それぞれ、人の心の「理性」と「無意識」を象徴しているのだとしたら…

最も有名なチャプター、天岩戸。
もしもそれが「心の奥底」を象徴しているのだとしたら…

元々面白い話ではあるのだけれど、
あら不思議、
こう「解釈」することで、
びっくりするくらい腑に落ちる、
それこそ「心の奥底」にすーっと入ってくる“ものがたり”に…!

「有名」とか「大事」とか言ったけれど、
書物としてなかなか残念な歴史を持つ『古事記』。
そのせいか実はあまり知られていない、
あまりちゃんと読まれていない、
のがもったいないくらいに、
単純に、お話としても実に楽しめる“ものがたり”である『古事記』。

その奥深い世界へ、
物語屋がご案内いたします。


古事記
4月19日(金)
19
:00~ 2,000円(夕ごはん付き 要予約)
演目:『アマテラスとスサノオ』『リセイとムイシキ』ほか
JR中央線中野駅 北口徒歩5分
手当て+かふぇ ゆとりろん
http://www.yutorilon.com/